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令和4年度教育行政執行方針
1 幼保小等連携
2 義務教育
3 高等学校・高等教育
4 生涯学習
5 社会教育
6 家庭教育
7 芸術文化
8 文化財
9 スポーツ
10 国際化対応
はじめに
令和4年第1回定例会の開催にあたり、教育行政の基本的な考え方と施策の大要について申し上げます。
新型コロナウイルス感染症は、人々の生命や価値観、生活、行動、さらには経済や文化など社会全体に広範囲かつ多面的な影響を与えており、まさに予測困難な時代が到来しています。こうした時代の潮流は、ソサエティ5.0時代に向けた動きやデジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速させ、従来の方程式では解が見つからない社会問題にどう取り組んでいくかという大きな問題を提起しています。
このような時代の中で、当市が将来にわたって発展していくためには、さまざまな問題に自ら立ち向かい、さまざまな人たちと協働して、それぞれの状況に応じて最適な解決方法を探り出していく力をもつ人材を育成する教育の役割が、ますます重要です。
学校教育では、持続的に児童生徒の学びを保障していく中で、新しい時代に必要となる資質・能力の育成に向けた教育の充実、地域とともにある学校づくりの実現などが求められており、社会教育では、社会の変化に柔軟に対応する中で、さまざまな課題解決・自己実現のための生涯学習の推進、学習機会の提供などが求められています。
教育委員会では、社会がどのように変化しようとも、子どもたちがふるさとへの誇りと愛着を持ち、自ら考え、主体的に判断し、より良く問題を解決する資質や能力、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性、そして、たくましく生きていくための健康や体力をバランス良く育んでいくことに努めるとともに、市民誰もが主体的に学び続け、学びの成果が生かされる生涯学習社会の実現を目指し、教育行政の充実・発展に尽力してまいります。
また、さまざまな教育課題に対応するため、『網走市教育大綱』を基軸として関連する計画に基づき、学校と家庭、地域、大学など関係機関との連携を一層強化して、各種施策を推進してまいります。
この後は、教育施策の概要について申し上げます。
1 幼保小等連携
第一に、幼児教育と小学校教育の連携についてです。
学校教育では、幼児期の教育を通して育まれた資質・能力を踏まえて教育活動を実施し、子どもが主体的に学びに向かうことが重要で、そのためには幼児教育と学校教育の連携が不可欠です。
このため、子どもが円滑に小学校生活を始められるよう、幼児と小学校児童との交流を充実させるとともに、教職員間で教育内容や指導方法についての情報交流や相互理解を深めるため、幼稚園や保育園、認定こども園と小学校との連携を進めてまいります。
2 義務教育
第二に、義務教育についてです。
全面実施となっている新学習指導要領の理念に基づき、子どもたちが自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、豊かで幸せな人生を切り開いていくことができる「生きる力」を育むために、「知識・技能の習得」「思考力・判断力・表現力等の育成」「学びに向かう力・人間性等の涵養」が実現されるよう、一人ひとりに応じたきめ細かな指導の充実を図っていきます。
さらに、多様な人々と協働しながら、新たな価値を創造していくための力を身に付けた子どもを育むため、引き続き、高等学校や大学、関係機関との連携も図りながら、さまざまな施策を推進してまいります。
今なお警戒が必要なコロナ禍にあって、「子どもたちの学びを止めない」を合言葉として、感染とその拡大リスクを可能な限り低減させて学校運営を継続するとともに、子どもたちが感染症を正しく理解し、リスクを避ける行動をとることができるよう引き続き感染症対策に関する指導を行ってまいります。同時に、感染症対策などを徹底しながらも学校運営が円滑に継続できる学校環境整備にも取り組んでまいります。また、感染症などによる臨時休校時には、インターネットを活用したオンライン学習の充実が図られるよう、一層の環境整備を行います。
次に、「確かな学力」の育成ですが、当市の児童生徒は、「全国学力・学習状況調査」での全国平均との差が縮まるなど、年々改善の傾向が見られておりますが、学習内容の確実な定着には、学校が一体となって質の高い教育活動を推進するとともに、生活習慣や学習習慣の指導も含め、きめ細かな指導をさらに充実させていく必要があります。
そのため、学力の課題やこれまでの取組の成果を教育委員会と学校、家庭、地域が共有するとともに、「網走市読書感想文コンクール」や「土曜学習サポート(あばしり寺子屋)」などの取組を推進してまいります。また、gigaスクール構想により整備した一人一台端末をより効果的に活用するため、教育の分野でもDXの推進を図り、電子黒板などのハードウェアやデジタルドリル教材や指導者用デジタル教科書などのソフトウェアを並行して整備・充実させ、「令和の日本型学校教育」が求める「主体的・対話的で深い学び」を目指し、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に取り組みます。
教員の専門的知識や指導技術の向上を図るため、引き続き、すべての小中学校での公開研究会の開催や、教職員で組織する「網走市学力向上推進委員会」での学校間の情報共有、指導方法の工夫改善、小中連携の取組を進めるとともに、特別支援教育研修会、ICT研修会や新任教職員研修会を実施するなど、今日的課題やキャリアステージに応じた教員の育成を推進します。
一人ひとりの資質・能力を伸ばすための、きめ細かな指導の充実では、教員の指導力向上を図る研修を実施するとともに、学習支援員の配置による算数・数学科での習熟度別指導や少人数指導、外国語指導助手(ALT)の配置による英語教育の充実に取り組んでまいります。
土曜日や長期休業中、放課後での学習機会の創出・支援では、東京農業大学や市内高等学校と連携し、学生ボランティアを活用した取組を推進してまいります。
家庭や地域と連携した学力向上の方策として、生活リズムチェックシートの積極的な活用を図るなど、基本的な生活習慣の確立や家庭での学習習慣の定着に向けた取組を推進してまいります。
「豊かな人間性」を育む教育では、自他の持っている良さを大切にし、思いやりの心を育んでいけるよう、道徳教育の充実を図ってまいります。また、自分の感覚や行為を通して理解する実習や実験など、さまざまな場面で実際に体験することを通じて学ぶことの重要性が、AI技術が高度に発達するソサエティ5.0時代にこそ一層高まるとされています。そのため、学校教育と社会教育が連携し、学校支援地域本部事業やデジタル図書館を利用した読書活動の推進、社会教育機関・施設を活用した自然体験や職業体験、ボランティア活動など、あらゆる教育活動を通して、自立心や自律性、思いやりの心を培い、子どもたちの豊かな人間性や社会性を育む教育を推進してまいります。
「健やかな体」の育成では、なぜ、良く食べ、良く眠り、良く運動することが大切なのかを理解し、自ら心身の健康を大切にする気持ちや運動の楽しさ、喜びを実感できる体育活動を通して、心身共に健康で元気に生活できる健やかな体を持った子どもの育成を目指してまいります。
楽しく、達成感が味わえる体育授業をはじめ、全小中学校が行う「一校一実践」の取組、「タグラグビー」の推進、「オホーツク網走マラソン」への参加促進などに努めるほか、日本体育大学との連携のもと、大学指導者による教員研修を通して、体力向上を図る取組を推進してまいります。
次に、生徒指導では、SNSの利用上のトラブルや、いじめ、不登校などさまざまな課題に適切に対応できるよう、学校における情報モラルに関する指導や、相談体制を充実させるとともに、関係機関との連携を図りながら、これらの未然防止、早期発見、早期対応に努めてまいります。
特に、いじめの問題は事実関係の早期把握に基づく適切な対応による解決が重要となることから、網走市いじめ防止基本方針や、学校いじめ防止基本方針に基づき、「網走市いじめ問題等対策連絡協議会」を開催するなど、学校と家庭・地域における情報の共有や指導体制の充実を図ってまいります。
また、各学校の児童会や生徒会などが行う「いじめ防止」に関する活動の交流や、子どもたち自身がいじめの問題について考え合う機会として開催する「網走市子ども会議」などの取組を継続してまいります。
相談窓口を広く持ち、相談機会を増やすことにより問題の芽を早期に解消し、きめ細やかな指導につなげるため「スクールカウンセラー」を複数名配置するとともに、「家庭児童・教育相談室」の活用促進、さらには「適応指導教室(クリオネ学級)」での不登校児童生徒への学習支援の取組を進めてまいります。
特別支援教育では、特別な支援を必要とする子どもへの対応を充実させ、一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な指導や支援が重要です。特別支援学級や通常学級に支援員を配置するほか、学校職員間で情報を共有し、教職員や支援員を対象にした研修会の開催などを行い、特別支援教育の充実に努めるとともに、個に応じた学習環境の整備に努めてまいります。
経済的理由によって就学が困難な児童生徒の就学援助では、すべての児童生徒が義務教育を円滑に受けることができるよう努めてまいります。
登下校時の児童生徒の安全確保では、交通安全や防犯、防災の観点から通学路危険箇所の安全確保に向けた取組を進めるとともに、各地域での見守り活動を側面的に支援し、スクールガードリーダーを継続して配置するほか、パトロール活動用の資材の整備、関係行政機関などで組織する「子どもの安全確保連絡会議」との連携などにより、子どもたちを不審者などから守る取組を継続して行ってまいります。
学校図書館では、引き続き図書館のより良い環境づくりや蔵書の充実を図るとともに学校図書館司書の配置により、本に親しむ習慣を子どもたちに根付かせるための方策を推進しながら、読書環境の一層の充実に努めてまいります。
学校施設の整備では、計画的な整備に取り組み、老朽化などに伴う学校施設の効果的かつ効率的な整備を進めるとともに、学校遊具などの点検・更新など児童の安全確保や学校施設の環境改善の取組を推進してまいります。
次に、学校給食では、給食用備品の整備や設備の改善を進めるとともに、子どもたちに安全で安心な学校給食を継続して、安定的に提供していくための運営体制づくりを進めてまいります。また、給食食材の産地公表を引き続き実施するとともに、地産地消の取組のほか、子どもたちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう食育について推進してまいります。
このほか、地域とともにある学校づくりを目指し、地域の住民や企業、教育機関などがもつ人的資源や技能などを生かした学習環境づくりを進めるとともに、学校と家庭、地域が一体となった学校運営ができる仕組みとして「コミュニティ・スクール(CS)」の推進に努めます。そのことにより、学校と地域住民などが、「9年間でどのような子どもを育てるのか」「地域でどのような教育を実現していくのか」という目標やビジョンを共有しながら、地域と一体となった特色ある学校づくりを推進します。
教職員の働き方改革では、校務支援システムを活用した勤務時間の把握や校務の情報化・効率化を進めるとともに、すべての教員が子どもたち一人ひとりと向き合う時間の確保に努めます。
3 高等学校・高等教育
第三は、高等学校・高等教育についてです。
小中学生が高等学校・大学と交流する機会を充実することで、将来を見通した学習への興味・関心や学ぶ意欲の向上を図ってまいります。
また、網走南ヶ丘高校定時制課程振興のための助成や、定時制生徒の下校時の公共交通手段確保への支援を引き続き行ってまいります。東京農業大学生物産業学部や学校支援地域本部事業との連携による、市内小中学校での農大生や一般市民の「教育ボランティア」の拡充にも努めてまいります。
また、奨学資金制度については、従来の奨学金と令和3年度に創設した「サン育英奨学金」を運用することで、社会の有用な人材の育成を目指してまいります。
4 生涯学習
第四に、生涯学習についてです。
市民の自主的で主体的な学びや市民相互の学習活動は、豊かな人間性を育み、地域力を高める大きな力となるものです。そのため、各世代の学習ニーズに対応した学習機会の充実や学習情報の提供など、市民の豊かな学びを育む環境づくりに努めてまいります。
また、オホーツク・文化交流センターでは、インターネットから空室状況の確認や施設の予約ができるシステムを導入するなど、利用者の利便性向上を図ってまいります。
図書館では、市民の生涯学習の支援やさまざまな生活課題の解決のため、電子図書館の書籍充実と図書館内でも閲覧可能な環境整備を図り、幅広い図書資料の収集・整備の充実を図るとともに、レファレンスサービスを充実してまいります。
また、子どもの読書活動を推進するため、学校などと連携した事業を引き続き実施するほか、図書館内外での「よみきかせ会」の開催や読書ノートの整備、絵本パック事業などを実施してまいります。
高齢者や障がいのある方々の読書活動の推進では、ボランティア団体などとの協働による読書機会の充実に努めてまいります。
5 社会教育
第五に、社会教育についてです。
社会構造が変化し、人々の生活様式や価値観が多様化する中、恵まれた自然環境や産業特性、まちの魅力を学びにより再認識し広く伝え、活動することができる人づくりが重要であることから、網走の特色ある地域資源や歴史・文化について学ぶ「あばしり学講座」をはじめ、生活や地域の課題解決に向けた各種講座を開設するとともに、高等教育機関などと連携した多様な学習機会の提供に努めてまいります。
また、地域全体で学校教育を支援する「学校支援地域本部事業」や「放課後子ども教室推進事業」のほか、市民や関係団体と連携し、子どもたちに質の高い学習機会を提供していくとともに、夢を持って生きることの大切さを伝える場を創出してまいります。
さらに、寿大学では、高齢者が健康でいきいきと暮らすための学習機会を提供するほか、高齢者の学習意欲や活動意欲の向上に努めてまいります。
6 家庭教育
第六に、家庭教育についてです。
子どもたちが健やかに成長していくために、家庭と地域が共に学び、地域全体で子どもを育てていくための環境づくりを目指し、学校や地域、関係団体などと連携を図りながら、子どもたちの発達段階に対応した事業を実施してまいります。
7 芸術文化
第七に、芸術文化についてです。
心の充実は豊かな人とまちを育むものであり、市民文化の高揚は地域社会に豊かさと潤いをもたらします。そのため、市民の誰もが優れた芸術に触れることができるよう、さまざまな分野の芸術鑑賞事業を実施するほか、網走ゆかりのアーティストによる「ふるさとアーティストフェスティバル」を開催いたします。
また、芸術文化合宿では、引き続き網走の地域性を活かした誘致活動に取り組み、まちのにぎわいと芸術文化の拠点づくりに努めてまいります。
美術館では、開館50周年を記念して、「近代西洋絵画名作展」、郷土出身作家「長谷川誠展」を開催するほか、常設展や現代作家の企画展を開催し、優れた美術作品を鑑賞する機会を提供いたします。
さらに、小中学生のための美術展や市内学校への「出張美術館」を実施するほか、各種美術講座や作品解説会の開催など、美術教育の普及に努めてまいります。
また、将来の活躍が期待される若手美術家を応援するため、市内にその作品を展示する事業を引き続き取り組んでまいります。
博物館では、国の登録有形文化財に登録された建物の保存に努めるとともに、郷土を語ることのできる博物館として展示や資料をはじめ、その機能の充実に一層努めてまいります。
また、歴史と自然を学ぶための企画展などを開催するほか、博物館友の会と連携した各種講座や見学会、観察会などを開催し、子どもたちや市民の学習機会の充実と教育普及活動を推進してまいります。
8 文化財
第八に、文化財についてです。
国の史跡「モヨロ貝塚」について学ぶことのできる講演会や体験学習会などの講座を開講し、モヨロ貝塚の理解とPRに努めるとともに、郷土博物館建物の文化財的な価値を保全するため、改修工事を実施してまいります。
9 スポーツ
第九に、スポーツについてです。
スポーツは、青少年の健全育成や健康の維持・増進、コミュニティづくりなどの役割を果たすものであり、年齢や性別、障がいの有無にかかわらず、誰もが生涯にわたってスポーツに親しみ、健康づくりに取り組むことができる環境づくりが重要です。
このため、競技スポーツの振興とともに、それぞれの体力や年齢・目的に応じた各種スポーツ教室を開催するなど、スポーツへの参加機会の提供に努め、スポーツを通じた健康づくりやコミュニティづくりを進めてまいります。
また、障がい者スポーツの振興を図るため、市内関係団体や日本体育大学附属高等支援学校と連携し、障がい者スポーツ教室の開催や指導者育成の支援を行い、スポーツを通じた仲間づくりや交流のできる環境づくりに努めてまいります。
次に、スポーツ合宿事業の推進では、関係機関や団体との連携を図りながら、ラグビーや陸上競技、サッカーなどの誘致活動を積極的に行うとともに、国際大会への出場選手や障がい者スポーツなど、幅広い合宿誘致に取り組み、地域の活性化およびスポーツに対する市民意識の高揚を目指してまいります。
また、令和5年に当市で開催される全国高校総体ボート競技大会に向け漕艇場の整備を進めるとともに、大会準備、選手関係者の受け入れ態勢の整備を進めてまいります。
さらに、陸上中長距離の国内トップ選手が出場する「ホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会」をはじめ、市内で開催される全国、全道規模の大会など、各種スポーツ大会の開催を支援するほか、競技スポーツの振興を図るため、スポーツ団体や関係機関と連携し、競技力の向上や指導者育成、スポーツ活動の支援など、環境づくりに努めてまいります。
10 国際化対応
最後に、国際化対応についてです。
幼児や小学生などが外国語に親しみ、異なる文化や風習などを学び理解し、日本や網走の文化を再確認するとともに、国際社会の一員であることを自覚する環境づくりとして、国際理解のための体験型学習や英会話指導員による語学指導を引き続き実施してまいります。
おわりに
以上、令和4年度における教育行政推進にあたっての教育施策の概要について申し上げました。
教育委員会では、社会がどのように変化しようとも、子どもたちが自らの夢や希望に向かって、自立して社会でたくましく生きていくために必要な、総合的な人間力の基礎を身につけることができるよう、学校と家庭・地域が共通の認識の下、関係機関・関係団体などとの連携を図りながら、本市教育のより一層の充実・発展に全力で取り組んでまいりますとともに、生涯を通して豊かに学ぶことのできる生涯学習社会の構築に努めてまいります。
市民の皆様並びに議員各位の一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。