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令和4年度市政執行方針
1 はじめに
2 市政執行の基本方針
(1)市政を取り巻く環境
(2)当市の財政状況
(3)今年のまちづくりについて
3 主要施策
(1)一人ひとりを大切にするやさしいまち
(2)豊かな自然と共生する安心なまち
(3)ひとが集いにぎわいと活力を生むまち
(4)豊かなひとを育むまち
(5)ともに歩み、ともに築く協働のまち
4 おわりに
1 はじめに
令和4年網走市議会第1回定例会において、予算をはじめ関連する議案のご審議をいただくにあたり、市政執行の所信と施策の概要を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
さて、昨年は、一昨年に続いて新型コロナウイルス感染症の影響を受けた一年でありました。新型コロナウイルス感染症は、私たちから「日常」を奪い、今もなお、市民生活や経済活動へ想像以上の大きな影響を与え続けています。
そのような中、昼夜を問わず最前線で奮闘しておられる医療従事者の皆様や、社会経済活動を維持するため日々尽力されている皆様、また、終わりの見えない我慢と緊張を強いられながらも、冷静な行動と、感染拡大を防ぐ取り組みを続けておられる市民の皆様に心から感謝いたします。
当市のワクチン接種は大きな混乱もなく順調に進み、3回目の接種につきましても、昨年12月から医療従事者など優先接種者への接種を開始し、2月からは65歳以上の方々やエッセンシャルワーカーの方々へ、また、3月に入りすべての市民の皆様を対象に開始したところです。
新型コロナウイルス感染症への対策としては、これまで、無料のスクリーニング検査や、不安解消を目的とした抗原定量検査の実施など、感染症の拡大防止に鋭意、努めてまいりました。さらには、大きな影響を受けた観光業や飲食業、宿泊施設、公共交通事業者への支援金の給付、店舗が実施する感染防止対策への支援なども講じてまいりました。
引き続き的確な状況把握に努め、効果的な施策を展開してまいります。
地域医療では、高齢化の進展などにより需要が増加している泌尿器科の診療再開に向け、高度医療機器の整備を支援し、手術にも対応可能な医療体制を確保できました。開業医についても、これまでに2件の診療所の開設を実現したところであり、引き続き誘致に努め、地域医療の充実に努めてまいります。
第7回目となるオホーツク網走マラソン大会は、アプリにより距離とタイムを重ねて完走を目指す「オホーツク網走マラソンon the web」として開催し、全国から2,012名もの方々にご参加いただきました。大会当日は、FMあばしりとタイアップした特別放送を行い、第8回大会への参加に向けた取り組みを行うことができました。
観光の面では、昨年2月のピーチ・アビエーション成田女満別線に続き、7月には関西女満別線が就航いたしました。特に関西圏の方々にとっては、オホーツクが身近に感じられることとなりました。ポストコロナにおけるインバウンドの取り込みも大きく期待できるものと考えており、今後も、航空会社などとの連携を通じて地域の魅力発信と誘客の促進に努めてまいります。
交通インフラでは、北海道横断自動車道網走線、女満別空港から網走市までの区間の事業化に向けて、第1回計画段階評価が北海道地方小委員会で審議されたところです。道央圏とのアクセスの向上は、物流や観光振興に資するだけでなく、救急医療の側面においては、搬送に要する時間の短縮や患者負担の軽減が図られるなど、まさに命を守る道づくりが始まろうとしています。
さらに、ソサエティ5..0に向かい自動運転の技術が今後、確実に進展する中で、自動車専用道路の存在は必須であり、事業化に向けて、当該自治体として着実に取り組んでまいります。
デジタル化の推進では、昨年9月に「関係人口創出」「市民サービス」「行政運営」にデジタルファーストで取り組むことを宣言いたしました。市民に利便性と快適性を提供し、ペーパーレス化や文書管理をはじめとした行政運営のデジタル化を進めてまいります。
現在、実施設計の完成が大詰めを迎えている新庁舎についても、「書かせない」「待たせない」窓口の実現など、市民サービスのデジタル化に取り組み、基本理念である「市民に自然にやさしいスマート庁舎」を目指し、デジタルによる利便性と人に優しい触れ合いが融合する、市民に親しまれる庁舎づくりをしてまいります。
引き続き、新型コロナウイルス感染症へ迅速に対応しながら、誰もが健康で安心して暮らし続けられるまちの実現に全力で取り組んでまいります。
2 市政執行の基本方針
(1)市政を取り巻く環境
政府は、新型コロナウイルス感染症への対応に万全を期すとともに、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現に向け、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に基づく補正予算と令和4年度当初予算を一体とした、いわゆる「16か月予算」の考え方で、地方を活性化し世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」などによる大胆な投資とともに、ポストコロナ社会を見据えた成長戦略により経済成長を図るほか、働く人への分配機能の強化や少子化対策などを含むすべての世代が支え合う持続可能な全世代型社会保障制度の構築を柱とした分配戦略を推進するとともに、防災・減災・国土強靭化やグリーン社会の実現などに切れ目なく取り組むとしています。
一方、国・地方の債務残高がGDPの2倍を超える厳しい財政状況にありますが、「経済財政運営と改革の基本方針2021」では、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行いつつ、「経済あっての財政」の考え方のもと、デフレ脱却を目標に成長力強化に取り組みながら、これまでと同様の歳出改革努力を継続するとともに、応能負担の強化など歳入改革を進めていくとしています。
国の令和4年度一般会計予算は、10年連続で過去最高を更新する107兆5,964億円となり、税収も過去最高の65兆2,350億円と前年度当初より約7兆8千億円の増加となりました。しかしながら、公債依存度は34.3%と依然として高い水準にあり、国の財政は厳しい状況にあると考えております。
(2)当市の財政状況
当市の財政状況は、これまでの行政改革の取り組みにより財政の健全度を示す財政指標は改善基調にあり、歳入では市税収入が大きく回復いたします。
一方、将来的には人口減少の影響により、一般財源の根幹をなす市税や地方交付税は減少していく傾向にあると考えております。
また、近年は多額の基金を繰入れる財政運営となっておりますが、ふるさと寄附の支えにより、一定の基金残高を維持しているところです。
歳出では、新型コロナウイルス感染症により影響を受けている市民の皆様への対応に迅速かつ確実に取り組むとともに、ポストコロナを見据えたデジタル社会への対応、市民生活の根幹を支える医療体制や公共交通の維持、老朽化する公共施設やインフラ施設の更新や長寿命化対策、子供を産み育てやすい環境づくりなど、地域の未来に向けた取り組みを、財政規律を保ちながら進めてまいります。
令和4年度の一般会計当初予算は239億9,999万9千円で、対前年度比マイナス2億7,937万5千円、1.2%の減、6つの特別会計は、総額で99億5,695万9千円、対前年度比マイナス1,688万8千円、0.2%の減となりました。
また、公営企業会計は3つの事業会計の総額で51億1,152万5千円、対前年度比プラス2億38万9千円、4.1%の増となったところです。
(3)今年のまちづくりについて
令和4年度は、国において編成された令和3年度第1次補正予算を活用しながら、新型コロナウイルス感染症への対応と社会経済活動の両立に向けた視点を持ち、総合計画を基本として、6つの観点からまちづくりに取り組んでまいります。
1つ目は「新型コロナウイルス感染症への対応」です。
国の方針に従い円滑なワクチン接種を進めるとともに、感染予防資材の整備や感染の不安がある方への検査費用の助成など、感染リスクの低減を図ってまいります。
また、閑散期における個人型旅行商品及び団体型旅行商品の旅費の一部を助成し、旅行需要の回復を図るほか、ウィズコロナ・ポストコロナ時代を見据えた新しい生活様式への対応として、小中学校においては、休校時にリモート対応が可能となるよう、教育環境の一層の充実を図ってまいります。
2つ目は「デジタル化の推進」です。
デジタル技術の活用により、一人ひとりが希望に沿ったサービスを選べ、利便性と快適性を実現できるまちを目指してまいります。
関係人口の創出にあたっては、観光ウェブサイトを刷新するとともに、新たに制作するPR動画を活用した広告配信にデジタルマーケティングの視点を取り入れ、ターゲットの選択と集中を意識した効率的かつ戦略的な観光プロモーションに取り組んでまいります。
市民サービスの向上にあたっては、施設の利用予約や、さまざまな申請手続きのオンライン化、住民票など証明書のコンビニエンスストアでの交付、窓口手続きの「ワンストップサービス化」など、利便性の向上を図ってまいります。
行政運営の効率化にあたっては、ペーパーレス化を基本とした業務改革を進め、事務事業の効率化を図るほか、多様な働き方に取り組み、持続可能な行政運営を目指してまいります。
また、デジタル技術によるビジネスの変革に対応するため、市内事業者のデジタル化を支援してまいります。
3つ目は「グリーンの推進」です。
公共施設などでの再生可能エネルギーの利用に向けて、遊休市有地を活用して太陽光発電を行う地域新電力会社の設立を目指すとともに、エネルギーの地産地消により地域の電力レジリエンスの強化を推進し、持続可能な地域社会の構築を目指してまいります。
また、市全体で温室効果ガスの削減を進めるため、再生可能エネルギーや、EVなどゼロカーボンドライブの普及、省エネルギーの推進、未利用熱やカーボンニュートラル燃料の利用などを視野に入れた、地域再生可能エネルギー導入戦略を策定してまいります。
4つ目は「子育て環境の充実」です。
安心して出産・子育てができるよう、子育て世代包括支援センターによる、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない総合的な支援をはじめ、引き続き妊産婦や乳幼児のケアに努めるほか、弱視などの早期発見や治療につなげるため、3歳児健診で、新たに屈折検査に取り組みます。
また、お子さんの誕生に際して子育て応援祝い金を支給するほか、中学校卒業までの医療費負担を、所得にかかわらず完全無償化し、子育て世帯の経済的負担の軽減を図ってまいります。
学校生活においては、特別支援教育支援員を増員し、支援が必要な児童生徒の状態に応じたきめ細かな支援を充実させるとともに、児童の心の悩みの早期発見・対応を図るため、小学校でのカウンセリング体制を強化してまいります。
5つ目は「産業の振興」です。
農業については、持続的な発展と魅力ある農村環境の維持に向けた取り組みを進めるとともに、引き続き、ジャガイモシロシストセンチュウのまん延防止と防除に万全を尽くしてまいります。
畜産については、あばしり和牛の産地ブランド化に向けた生産基盤の確立のため、優秀な母系集団の形成を図る取り組みを進めます。
また、森林の持つ多面的機能の維持を図るため、計画的な森林整備と林道施設の適切な管理に努めてまいります。
水産業については、デジタル技術を活用したホタテの資源量、漁場状況の調査を支援するとともに、引き続き、漁場環境の保全や水産物のPR、ブランド化や販路拡大に取り組んでまいります。
観光については、地域資源を活用したアドベンチャーツーリズムの推進や、オホーツク流氷館の展示物改修など、コロナ禍で減少した観光需要の回復に向けた取り組みを進めるほか、戦略的な観光地域づくりを推進するDMOを支援してまいります。
道の駅「流氷街道網走」では、引き続き、農産物の直売所を開設し、賑わいの創出など魅力の向上を図ってまいります。
中心市街地の活性化については、リモートワークなど多様な働き方に対応したコワーキングスペースを整備し、新たな人の流れを創出するとともに、空き店舗を活用した新規出店を支援するほか、新たに、ビジネスモデルの転換に取り組む事業者も支援してまいります。
市場開拓・販路拡大では、引き続き、ふるさと納税制度の積極的な活用により、特産品のPRに努めてまいります。
深刻化する人手不足に対しては、建築業などの社会インフラおよび公共交通を担う若者技能者の人材育成を支援するほか、新たに、市内に新規就職した若者に対し奨励金を支給し、地元定着を促進してまいります。
網走刑務所の公有地等の利活用については、共生型地域社会の実現と持続可能な産業振興を目指し、地域の事業者と連携を図りながら発展的な取り組みを進めてまいります。
6つ目は「安全・安心なまちづくり」です。
災害時の情報伝達手段であるFMあばしりからの緊急放送について、広報の実効性を高めるため、電波が届きにくい地域の解消を図るほか、引き続き、避難施設へ配備する防災備蓄品の整備を進めてまいります。
インフラの整備については、通学路の安全対策のため歩道の新設・改修に加え、法面や擁壁の補修など、施設の長寿命化を図るための老朽化対策を計画的に進めるとともに、災害に備えた河川の適切な管理に努めてまいります。
オンデマンドバスの実証実験については、運行地域を拡大するほか、定期券の設定など料金体系を見直し、利便性の向上を図ってまいります。
公営住宅については、子育て世帯に配慮した新たな潮見団地の整備に着手してまいります。
一時避難施設としての機能を有する新庁舎については、基本理念である「市民に自然にやさしいスマート庁舎」を体現する、市民に親しまれる庁舎の建設を進めてまいります。
次に、網走市総合計画に定める将来像「豊かな自然にひと・もの・まちが輝く健康都市網走」の実現に向けて、具体的に取り組む主な施策を、5つの目標に沿って、改めてご説明いたします。
3 主要施策
(1)一人ひとりを大切にするやさしいまち
第1は、「一人ひとりを大切にするやさしいまち」づくりです。
保健医療
市民の皆様が生涯を通じて健康で安心して暮らせるよう、健康都市連合加盟都市と情報を共有しながら、保健・医療、健康づくりの施策を一体的に推進してまいります。
生活習慣病の予防では、引き続き「あばしりベジラブル運動」の普及啓発や、対象事業に参加した方にポイントを付与する「あばしり健康マイレージ事業」に取り組むほか、健康づくり指導者や運動指導者を養成してまいります。
医療体制の確保では、2次救急医療機関の高度医療機器の更新を支援するほか、引き続き、開業医の誘致を目指すとともに、人材確保に取り組む医療機関を支援し、医療体制の維持、充実に努めてまいります。
母子保健では、切れ目のない相談体制の確立とともに、引き続き、不妊治療費と不育症治療費の助成に取り組むほか、就学前に子どもの発育・発達状況を確認する機会となる5歳児への健康相談を充実させてまいります。
健康に不安を感じている方には、これまでの電話相談に加え、チャットボットによる自動応答の仕組みを導入し、健康や医療、育児などの相談に24時間体制で対応してまいります。
子宮頸がんについては、ワクチンの積極的勧奨を再開するとともに、早期発見、早期治療のため、検診を受診した方のうち希望する方へHPV検査を実施してまいります。
新型コロナウイルス感染症への対応については、円滑なワクチン接種を進めるとともに、感染予防資材の整備や検査費用の助成、発熱外来の開設を支援するなど、感染予防対策に取り組んでまいります。
地域福祉
地域福祉については、市民の皆様をはじめ団体、関係機関との連携を深め、「地域の支え合い」を念頭に、安心して生きがいをもって暮らすことができるまちづくりに取り組んでまいります。
高齢者福祉については、引き続き、地域および関係機関と情報や課題の共有に努め、連携強化を図りながら、医療・介護・予防・住まい・生活支援等のサービスを切れ目なく一体的に提供する地域包括ケアシステムのさらなる推進を図るほか、介護人材の確保に取り組む事業者を支援し、介護職員の離職防止や定着促進を図ってまいります。
また、デジタル機器に慣れ親しめるようスマートフォン講座を開催し、デジタル技術の活用に対する不安や苦手意識の解消に努めます。
さらに、介護要支援者などに対し買物の送迎や付き添い支援の充実を図るとともに、高齢者の生活支援では、移動手段の確保が難しい高齢者等への買物弱者対策として、民間の協力を得ながら既存サービスの周知と充実を図ってまいります。
障がい者福祉については、手話言語条例に基づく手話の普及啓発や北海道障がい者スポーツ大会の誘致などを通じて、障がい者の自立と社会参加の促進、障がい者に対する理解の促進に努めてまいります。
子育て支援については、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない総合的な支援や、子どもの出生に際して子育て応援祝金を支給するほか、新たに、生後1か月児の健康診査に係る費用を助成してまいります。
また、これに加え、中学校卒業までの医療費負担を、所得にかかわらず完全無償化し、子育て世帯の経済的負担の軽減を図るほか、ひとり親家庭にあっては、引き続き、医療費の一部または全部を支援し、親と子の健康保持および福祉の増進を図るとともに、経済的な支援や就労支援に取り組んでまいります。
生活福祉
生活困窮者に対しては、現在の自立相談支援と併せ、新たに、世帯全体の家計収支を分析し家計の再生につなげる取り組み、また、就労の準備として基礎能力の形成を支援するなど、自立に向けた支援策を強化してまいります。
(2)豊かな自然と共生する安心なまち
第2は、「豊かな自然と共生する安心なまち」づくりです。
都市空間
市街地における居住および都市機能の集約や適切な配置などを示す、「立地適正化計画」に基づき、コンパクトで利便性と持続性の高いまちづくりの推進を図ってまいります。
都市基盤
都市基盤については、通学路の安全確保のため歩道の新設・改修に加え、法面や擁壁の補修など、道路、橋梁、公園、港湾の長寿命化を図るための老朽化対策や計画的な整備を進めるとともに、公園遊具の安全点検の実施、未舗装道路の舗装化や郊外地区の道路整備、災害に備えた河川の適切な維持管理に努めてまいります。
冬期対策については、ロードヒーティングの計画的な改修や維持管理とともに、効率的な除雪体制の確保を図ってまいります。
港湾については、小型ボートの事故防止などを図るため、学識経験者や有識者、港湾関係者とともに、港湾の安全な利用のあり方について検討を進めてまいります。
公共交通については、オンデマンドバスの実証実験において、運行エリアを拡大するとともに、定期券の設定など料金体系を見直し、利便性の向上を目指してまいります。
また、運転手確保や労働環境改善に取り組むバス、タクシー事業者を支援してまいります。
JR北海道問題については、乗車運賃の助成や、市民団体などによる自発的な取り組みを支援し、地域利用の促進を図るとともに、市民の皆様をはじめ、団体や企業などへマイレール運動を提唱するなど、鉄路の維持存続に向けて、関係団体と多様な連携を図りながら対応に努めてまいります。
女満別空港の利活用については、地域や他空港の関係団体、北海道エアポート株式会社との連携により、路線の利用促進や、維持・拡大に取り組んでまいります。
生活安全
市民の安全・安心については、災害時の情報伝達手段であるFMあばしりからの緊急放送について、広報の実効性を高めるため、電波が届きにくい地域の解消を図ってまいります。
また、避難施設へ配備する防災備蓄品の整備を進めるほか、町内会、学校などを対象にした防災訓練や防災研修に取り組み、防災意識の向上を図ってまいります。
交通安全については、運転免許を自主返納した高齢者に対して、市内公共交通券を交付し、運転に不安を抱える高齢者による交通事故の抑制を図るほか、園児、児童、老人クラブ会員などを対象にした交通安全教室を開催し、交通安全意識の啓発に努めてまいります。
耐震化対策が必要な市庁舎以外の公共施設については、今後の整備のあり方を含め、総合的な検討を進めてまいります。
消防については、高規格救急自動車および高度救命処置用資機材を更新し、救急救命力の充実、強化を図ってまいります。
環境
地球環境の保全については、環境の保全と創造に関する施策の基本となる「網走市環境基本計画」を市民に周知し、地球温暖化対策の啓発を進めるほか、市全体で温室効果ガスの削減を進めるため、地域再生可能エネルギー導入戦略の策定を進めてまいります。
自然環境の保護については、ラムサール条約登録湿地である濤沸湖の価値を認識し、周辺域を含めたさらなる自然環境の保全と賢明な利用を図るため、「濤沸湖環境保全活用ビジョン」を改定してまいります。
廃棄物処理については、周辺自治体と連携しながら、広域化による中間処理施設および新たな最終処分場の設置に向けた検討を進めてまいります。
ごみの減量化にあたっては、ゴミ出しガイドブックの全戸配布、施設見学会や地域説明会の開催に加え、動画による広報など、市民の皆様にごみ分別の意義と分別手法の浸透を図るほか、コンポストの購入を助成し、市民のごみ減量化の取り組みを支援してまいります。
生活基盤
公営住宅については、子育て世帯に配慮した新たな潮見団地の整備に着手してまいります。
空き家対策については、空き家バンクを利用した物件の流通の促進や、住宅の解体に係る費用を支援してまいります。
上水道については、安全で安心な水を安定して各家庭に届けるため、導水管や配水管の布設替えなどを計画的に行ってまいります。
下水道については、河川・湖沼の水環境の保全を図る施設を整備するとともに、老朽化した機械設備などの更新を進め、公衆衛生の向上を図ってまいります。
火葬場については、火葬炉の改修を行い、適切な維持管理に努めてまいります。
(3)ひとが集いにぎわいと活力を生むまち
第3は、「ひとが集いにぎわいと活力を生むまち」づくりです。
農林業
農業については、持続的な発展と魅力ある農村環境の維持に向け、引き続き、環境に配慮した安全・安心な農作物生産への支援や農業基盤整備のほか、農業後継者及び新規就農者を対象とした研修を支援するなど、担い手の確保に努めてまいります。
また畜産では、新たに、あばしり和牛の産地ブランド化に向けた生産基盤の確立のため、地域内での母系集団の形成を目指し、優良繁殖雌牛の導入及びゲノム検査を支援してまいります。
病害虫や鳥獣の対策では、ジャガイモシロシストセンチュウのまん延防止と防除に万全を尽くすほか、エゾシカによる農作物被害対策、ヒグマ被害を未然に防ぐ対策を講じるため生息実態を調査してまいります。
林業については、森林の持つ木材生産と環境保全という多面的機能の維持と再生を図るため、計画的な森林整備や林道施設の適切な維持管理に努めるとともに、治山付帯施設の補修を進めてまいります。
水産業
水産業については、これまで目視で行っていたホタテの資源量調査について、新たに、デジタルシステムによる解析技術の導入を支援し、効率的、かつ的確な漁場状況の把握に努めてまいります。
併せて、濤沸湖でのシジミ種苗生産と種苗放流技術の確立に向けた試験、網走湖のシジミ資源の安定化に向けた調査・研究、ウニの増養殖試験のほか、海面・内水面における漁場環境保全や、網走湖および能取湖の水質・資源調査を支援し、漁家経営の安定化を図ってまいります。
水産加工振興については、水産物のブランド化を推進するとともに、当市に縁のある企業や友好都市、学校給食や大学食堂のほか、首都圏など大消費地でのPRを通じて、地場水産物の認知度向上を図るとともに、ふるさと納税制度の活用により消費拡大を図ってまいります。
また、外国人技能実習生の技能検定料や入国時研修に係る施設使用料を支援し、持続的な水産業等の発展を図ってまいります。
観光
観光では、ウェブサイトを刷新するとともに、新たに制作するPR動画の活用や、スマートフォンアプリゲームによる誘客など、デジタル技術を活用した観光振興に取り組んでまいります。
貴重な観光資源であるサンゴ草は、望ましい生育環境の確保に向け、群生地内の堤防崩壊を未然に防ぐ対策を講じるほか、オホーツク流氷館は、展示物の改修により魅力の向上を図り、コロナ禍で減少した観光需要の回復に努めてまいります。
また、DMO法人を支援し、戦略的な観光地域づくりを推進するとともに、道の駅「流氷街道網走」の魅力向上を図ってまいります。
商工業
中心市街地の活性化については、網走中央商店街振興組合や、網走商工会議所、「まちなか網走」などと連携を図りながら、イベントの創出や地域商社機能の強化、空き店舗の活用を支援するとともに、新たにコワーキングスペースを整備し、人の流れを創出してまいります。
企業誘致については、引き続き、地域の特性に即した誘致活動を推進するとともに、網走刑務所や地域の事業者との連携により、公有地などの資源を活用し、共生型地域社会の実現と持続可能な産業振興を目指してまいります。
また、デジタル技術によるビジネスの変革に対応するため、市内事業者のデジタル化を支援してまいります。
産業振興
市場開拓・販路拡大では、引き続き、ふるさと納税制度の積極的な活用を図りながら、特産品のPRに努めてまいります。
就労対策では、女性や高齢者の就労支援に努めるとともに、建築技能者や、社会インフラを担う若者技能者の人材育成に取り組む事業者を支援してまいります。
加えて、企業が行うU・I・Jターンの取り組みや、網走商工会議所が行う地元企業の就職情報発信を支援してまいります。
また、新たに、市内に新規就職した若者に対し奨励金を支給し、地元定着を促進してまいります。
(4)豊かなひとを育むまち
第4は、「豊かなひとを育むまち」づくりです。
学校教育
就学前施設から小学校への円滑な接続と連携のために、幼児と児童との交流や教職員が教育内容や指導方法の相互理解を深め、いわゆる「小1プロブレム」の未然防止を図るため、幼稚園、保育園、認定こども園、小学校の連携を進めてまいります。
学校教育については、教育内容の充実、学校運営の改善、家庭や地域を含めた教育環境の整備に努め、子どもたちの確かな学力、豊かな人間性、健やかな体の調和のとれた成長を促す取り組みを推進してまいります。
このため、学習支援員を配置し、習熟度別授業や少人数指導などに取り組むとともに、引き続き、外国語指導助手による英語教育の充実を図るなど、授業の円滑な進行と質の向上に努めてまいります。
また、gigaスクール構想の推進に向けて、オンライン学習機器や電子黒板を整備するほか、休校時に家庭以外でもタブレットパソコンによる課題学習に取り組めるよう、児童館のインターネット接続環境を整備してまいります。
さらに、児童の学力・体力向上を図るため、引き続き、東京農業大学の学生ボランティアによる学習サポート、および日本体育大学の指導者による子どもへの指導や教員研修に取り組んでまいります。
学校給食については、子どもたちに安全で安心な学校給食を継続して安定的に提供していくための運営体制づくり、施設整備を進めてまいります。
特別支援教育では、特別な支援を必要とする子どもたちの学校生活や学習活動をサポートする支援員を増員し、個々の状態に応じた、きめ細かな支援を充実させてまいります。
また、児童の心の悩みの早期発見・対応を図るため、小学校でのカウンセリング体制を強化してまいります。
引き続き、学校と地域が連携・協働により、地域とともにある学校づくりに取り組む「コミュニティ・スクール」を推進するとともに、校務の情報化と効率化、部活動指導員の配置により教員の負担軽減を図り、すべての教員が子どもたち一人ひとりと向き合う時間を確保することができるよう、取り組んでまいります。
高等学校については、網走南ヶ丘高校定時制課程の振興や下校時の通学手段の確保を支援するとともに、東京農業大学や学校支援地域本部との連携による教育ボランティアの拡大に努めてまいります。
東京農業大学については、地元や友好都市などから入学する学生への学資支援金の給付について、新たに関西圏からの入学者を対象に加え、さらなる学生確保対策に努めてまいります。
日本体育大学附属高等支援学校については、引き続き、保護者の経済的負担を軽減するための入学費用、また、教育環境や教育活動に対する支援のほか、新たに、学校が行う生徒確保対策を支援してまいります。
社会教育
社会教育については、市民の主体的な学習が豊かで潤いのある地域づくりへと進展していく契機となるような学びの場の充実を図り、網走の魅力を再認識し、新たな発想や創造につながる学習機会を提供してまいります。
加えて、子どもたちの豊かな心や感性、たくましく生きる力を育み、夢を持って生きることの素晴らしさを学ぶ、子ども夢育事業を引き続き実施するとともに、青少年の学習環境の整備を図るほか、高等教育機関等と連携した多様な学習機会を提供してまいります。
また、オホーツク・文化交流センターについては、新たに、施設の利用予約をオンラインで行える仕組みを構築し、利用者の利便性の向上を図ってまいります。
図書館については、各種資料の収集や整備・保存に努めるほか、電子図書館の書籍充実を図り、多くの市民が読書に親しめる環境づくりに取り組んでまいります。
文化
芸術文化については、多くの市民が優れた芸術文化に触れ、豊かな人間性を育むことができる活動の充実を図るため、さまざまな分野の芸術文化を鑑賞する機会を提供してまいります。
また、網走市ゆかりのアーティストに芸術文化の発表の場を提供する「ふるさとアーティストフェスティバル」の開催や、芸術系大学、団体などの合宿を誘致することで、芸術文化の活動拠点づくりを図るほか、音楽・美術の専門家による表現技法の学習機会を提供してまいります。
美術館では、優れた美術作品の鑑賞機会を提供する企画展や教育普及活動のほか、昭和47年に道内初の市町村立美術館として開館してから50周年を迎えることを記念して、近代西洋絵画名作展など特別展を開催してまいります。
また、展示作品への影響を最小にとどめるため、照明をLED化するほか、施設の改修を進め、長寿命化を図ってまいります。
博物館については、郷土の歴史について学び、体験する場として、企画展示や教育普及活動に取り組むほか、北海道を代表する田上建築の文化財的価値を保全するため、施設の長寿命化を図ってまいります。
モヨロ貝塚については、古代モヨロ文化を学び体験する講座の開催などにより、史跡を広くPRし、まちのシンボリックイメージとしてのモヨロ文化の定着を図ってまいります。
スポーツ
スポーツについては、競技スポーツの振興はもとより、誰もが生涯にわたってスポーツに親しみ、健康づくりを進めることができる環境づくりに取り組むほか、備品整備と施設の長寿命化を図ってまいります。
また、トップアスリートなどが「夢先生」として授業を行う「夢の教室」を引き続き市内の全小学校で開催し、児童の健全育成に取り組むとともに、全道大会、全国大会に出場するスポーツ少年団へ遠征費用を支援し、子育て世帯の負担軽減を図ってまいります。
障がい者スポーツについては、障がいのある人がスポーツに親しみ、身体を動かす喜びを体感することによって、健康増進や体力向上を図ることのできる環境づくりを進めるとともに、市内関係団体や日本体育大学附属高等支援学校と連携し、スポーツ教室の開催や指導者の育成を図ってまいります。
スポーツ合宿については、関係機関や団体との連携を図りながら、誘致活動に努めてまいります。
また、令和5年度に当市にて開催される、全国高校総体ボート競技大会に向け、施設の整備と運営の準備を進めてまいります。
交流
国際交流については、姉妹都市であるカナダ・ポートアルバーニ市や大韓民国蔚山広域市南区とは、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた上で対応してまいります。
また、神奈川県厚木市との小学生の相互交流など国内交流についても、同様に対応してまいります。
地域間交流では、網走の食材を扱う市外事業者や、ふるさと寄附をいただいた方々を中心にあばしり応援人・応援隊を募るとともに、東京農業大学の卒業生などへのアプローチによる関係人口の創出・拡大を図るとともに、網走の食材と農大の学びを活かしたオープンカレッジを首都圏で開催するなど、消費者と生産者をつなぐ交流機会や知見の還流、ビジネスマッチングの創出を目指してまいります。
また、網走で働くことを希望する若者を大都市圏から募る地域おこし協力隊制度に引き続き取り組み、移住・定住の促進に努めます。
(5)ともに歩み、ともに築く協働のまち
第5は、「ともに歩み、ともに築く協働のまち」づくりです。
地域協働
地域協働については、市民、地域活動の核である町内会や、さまざまな分野で活動している市民活動団体など多様な組織・団体とともに取り組んでまいります。特に、住民による「共助」と「地域力」の向上を図る町内会活動への理解と、市民活動の活性化を支援してまいります。
また、集会所の改修やバリアフリー化、コミュニティセンター・住民センターのインターネット接続環境の整備のほか、オンラインで利用予約できる仕組みを構築し、利用者の利便性の向上を図ってまいります。
広報・広聴分野では、広報紙の充実に努めるほか、lineを活用した、市民と双方向で情報を共有できる仕組みを導入し、的確な市政情報の提供や正確な情報の収集に努めてまいります。
また「まちづくりふれあい懇談会」「みんなの市長室」「市長への手紙」などに引き続き取り組み、市民とともに築くまちづくりを進めてまいります。
行政運営
行政運営は、「網走市まち・ひと・しごと創生総合戦略」の進捗状況や達成度の検証・分析を通じて、効率的、効果的な施策を推進してまいります。
また、「網走市公共施設等総合管理計画」に基づく公共施設等の適正な配置に加え、「第5次網走市行政改革推進計画」に基づく効率的で効果的な事務事業の推進を図り、健全な財政運営に取り組むほか、「網走市DX推進計画」を確実に推進し、新たな日常に対応した持続可能なまちづくりに努めてまいります。
広域連携については、大学、企業などのほか、JR北海道問題や、観光・空港の振興、地方創生、廃棄物処理などによる取り組みに加え、地域が抱える多様な課題解決を戦略的に推進する「未来を考える戦略センター」の機能強化を図ってまいります。
さらに、斜網地域1市4町の枠組みによる新たな定住自立圏では、救急医療体制や地域公共交通の維持など、圏域全体で必要な生活機能を確保するための取り組みを着実に進めてまいります。
4 おわりに
いつ収束するともわからない新型コロナウイルス感染症によって、私たちは日常の生活を一変させられてしまいました。そして、「ともに集まる」といった共生の場さえ失わせてきたのも、新型コロナウイルスでありました。
コロナ禍は新しい生活様式を生み出し、外出自粛、マスクの着用、パーテーションの設置など、社会的距離の確保が活動の条件となり、私たちの社会的営為が大幅に制限されました。当たり前などと以前は思っていた日常が、いかに幸せなことだったかと感じられたのも、このコロナ禍ではなかったかと思います。
そして、コロナ禍によって、誰もが危機にさらされたとき、誰かに助けてもらわなければ生きていけない現実を突き付けられました。それは、医療従事者の方たちやごみを収集してくださっている方たち、そして、マスクをすることでお互いに守ろうとする「他の人」たちです。
遠く離れた人とリモートで会議をすることが当たり前となり、自宅に居ながらにして仕事ができることは、このコロナ禍で急速に進みました。
一方、デジタル技術の進展は、人と会うことの大切さや、人と触れ合うことの大事さ、人の温もりを感じられることの喜びを改めて感じさせました。
コロナ禍を時代の先駆けと捉え、この2つが融合する社会の実現に向け、その端緒となる1年にしたいと考えております。
先人たちが困難を乗り越え今日の網走を築いてきたように、時代の潮流を見据え、市民の皆様とともに、着実にまちづくりの歩みを進めてまいります。
議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。