◆標準和名:ケガニ(十脚目クリガニ科)
◆漢字:毛蟹
◆学名:Erimacrus isenbeckii
◆英名:hair crab、horsehair crab
◆地方名:オオクリガニ
甲の形は雌雄で異なり、オスでは縦長の楕円形、メスではオスより幅広で円形に近く、また、メスの背甲面はオスに比べて膨らみが強くなっています。額(頭部の先端部分)は2歯からなり、甲の左右の側縁にはそれぞれ7歯あります。甲面には左右対称に小棘(きょく)の集まりがあり、触角はやや長く毛が生えています。鉗脚(先端がはさみ状になっている脚。)は歩脚(歩行に用いる脚)より短く、鉗脚と歩脚の各節には羽状の毛と小棘があります。腹部は三角形で、その幅はオスよりメスのほうが広くなっています。体色は脱皮直後はオレンジ色ですが、数時間で薄いピンク色に変わり、その後は次第に茶色っぽくなります。大きいものではオスで甲長15cm、メスで甲長12cmになります。
ベーリング海東部からアリューシャン列島、千島列島、サハリン南部、日本を経て、朝鮮半島東岸に至る北太平洋の広い海域に分布し、特に北海道からカムチャッカ南部にかけての千島列島沿いに多く生息しています。国内では北海道沿岸各地から太平洋側では茨城県まで、日本海側では島根県まで分布し、北海道周辺のオホーツク海と太平洋に特に多くなっています。主に水深150mより浅く、水温15℃以下で、底質が砂か砂泥のところに生息します。
北海道沿岸ではオホーツク海沿岸一帯に分布するオホーツク海群、噴火湾から襟裳岬周辺に分布する襟裳岬以西群、えりも町目黒から釧路に分布する釧路以西群、釧路より東の太平洋沿岸に分布する釧路以東群が知られているほか、奥尻島周辺に分布する群や、冬季にサハリンのアニワ湾南西部から宗谷海況周辺に移動してくる郡も知られています。
一般に北海道周辺のケガニは、暖流が張り出してくる夏季から秋季にかけて沖合の深みへ、冬季には沿岸の浅みへ移動するという季節的な深浅移動を行なうほか、水平方向の移動も知られています。
ケガニのメスは脱皮直後に交尾を行なって、交尾後1年近くを経て産卵し、腹部に卵を抱きます。卵はメスの腹部に抱かれて、13~16ヶ月後に幼生がふ化します。メスは幼生をふ化させた後、半年前後で再び脱皮します。卵は直径0.8~0.9mmで、産卵直後はオレンジ色ですが、ふ化が近づくと発眼して黒く見えるようになります。
餌はヨコエビ類、ヤドカリ類、エビ類、イカ類、魚類、ゴカイ類、二枚貝などを食べています。
北海道のケガニ漁場は、オホーツク海沿岸一帯の水深60~130m、太平洋沿岸一帯の水深50~100mの、底質が主に砂や砂泥のところで、日本海側では他の漁業で混獲される程度となっています。
北海道ではほとんどの海域で、「ケガニかご」以外の漁具でのケガニの漁獲が禁止されています。ケガニかご漁法は、餌を入れたかごをロープに15~20m間隔で取り付けて、1~2昼夜海底に沈め、餌に誘われてかごに入ったケガニを漁獲する方法です。この漁法は刺網などと違って、メスガニ、小型ガニや魚類などの混獲物を生かしたまま速やかに海に戻せるという利点があります。餌にはスケトウダラ、スルメイカ、ホッケ、キュウリウオなどが使われます。
北海道におけるケガニの漁獲量は、かつては2万トンを超えていましたが、近年では2千トンほどに落ち込んでいます。このように急激に減少した資源の回復を図るため、メスガニと甲長8cm未満のオスガニの漁獲が禁止されているほか、ケガニ漁業ではその年に漁獲してよい上限が決められている「許容漁獲量制度」が導入されています。また、単価の安い脱皮直後のカニが多く漁獲される時期には自主的に休漁するなど、漁業者自らが資源保護のための取り組みを行なっています。
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